波多野 友久 さん

略歴

居住国、シンガポール共和国 (2007年10月現在)
勤務先、ブラザー・インターナショナル・シンガポール
(Brother International Singapore Pte Ltd)

1973年、京都府立桂高校卒業
1977年、外国語学部ドイツ語学科卒業。
同年ブラザーインターナショナル鞄社。 アメリカ営業部配属。
1984年、ブラザーインターナショナルUSA(ニュージャージー州)に出向。 ロジスティックス、キャッシュフロー、ファイナンスを担当。
12年間のアメリカ勤務を終え、1996年に帰国。
2001年、ブラザーインダストリーズテクノロジーマレーシアに出向。 マレーシア工場のロジスティックを担当。
2003年、ブラザーインターナショナルシンガポールに出向。 シンガポール及びASEAN全体のロジスティックと ITシステム統括を担当。
(2007年10月現在)


 外国語学部創立40周年おめでとうございます。 外国語学部卒業生として、在学生の皆さんにお話しできる機会を頂戴した事を感謝いたします。

 

 皆さん、こんにちは。 77年にドイツ語学科を卒業した波多野です。 外国語を学ぶ皆さんの中には、いつか海外で生活したい、働きたいと希望を持っている人が多いと思います。 外国語学部は他の学部よりも海外により近い環境にあると思います。 この利点を最大限生かして下さい。

 

今までを振り返り、海外勤務の経験を、学生時代の昔話も交えてお話ししたいと思います。 私は入社して30年になります。 今まで、日本、アメリカ、マレーシア、シンガポールと4ヶ国で勤務し、海外での勤務経験は2007年で通算19年になります。 職種の関係で、外国語は残念ながらドイツ語ではなく英語を使ってきました。 でも、ドイツ語学科で学んだ語学に対する姿勢は、共通したものと思います。

ドイツ語学科で学んだこと

 ドイツ語学科を卒業して最も感謝していることは、外国語は学問ではなく、同じ言葉を話す人たちと実際に交流するためのツールだと気付いたことだと思っています。
 ドイツ語学科では初日から驚きの連続でした。 初回は山辺教授の授業でした。 ドイツ人教授を伴って来られ、私たちの前で、先ずドイツ人教授とドイツ語で話し始められました。 私たちは全く分かりませんでしたが、教授は楽しそうにドイツ人教授と談笑され、「君たちも卒業する頃にはこうなれるよ」と言って頂きました。 まるで映画でも見ている思いでしたが、考えてみればドイツ人とドイツ語で話すことは何も不自然でないし、冗談を言えば笑うのも当然です。 しかし中・高校と英語を教科として見てきた私には、外国語とは辞書を引いて文章を読み、文法を勉強するものだったので、日本人とドイツ人がドイツ語でコミュニケートして理解し合っている状況にとても驚かされました。 語学はコミュニケーションのツールだと気付いたことが、私のスタート地点でした。
 授業内容は最初は会話中心で教科書の丸暗記でした。 文法・構文などはほとんど分からないまま反復練習です。 自分の気持ちがそのまま言葉になるような練習の繰り返しでした。 例えば、「朝起きて挨拶したい気持ちの時にはGuten Morgenと言いなさい」という具合。 なぜ「おやすみなさい」の時は “Guten” が “Gute” になるのかは後から教わりました。 まるで子供に戻った様でした。 今は、真剣な内容でも冗談でも、英語の時は英語で考え、いちいち日本語を置き換えませんが、今から思うと、その基礎訓練を、ここで学んだと思います。

 

語学で得るものは?

 語学を探求し、より完璧に話せる努力を積むことは、決して無駄ではないと思いますが、仕事し、生活する上では、完璧を求める必要は全然ないと思います。 アメリカに渡った後、周囲と一通り問題なくコミュニケートすることは、心配したほど難しくありませんでした。 言葉の壁の対策は、ひたすら覚えることです。 ボキャブラリーを増やすこと、微妙な心の動きを表現できる言い回しを覚え、自然に使えるように繰り返すことです。 自分も使え、また相手がそう言ったときの気持ちを察することができるように慣らして下さい。
 スポーツ、時事、料理、旅行など何でもよいので、世間話で構わないから、あなたの好きな話題を原語で話せるような機会を作ってみてください。

 

 アメリカで2・3年生活して気付いたことですが、文化の壁の方が言葉の壁よりもはるかに高いです。 つまり、なぜそんなことが嬉しいの? なぜそんなことに怒るの? なぜそのジョークで笑えるの? 背景と価値観が理解できないと、翻訳できても共感できません。 これが文化の壁だと思います。 外国の人とより深く付き合うためには、少しでもこの世界に入る努力をすべきと思います。 述べた様にこれは決して簡単ではありませんが、外国語学部の皆さんは日常の中で外国語に接しているので、意識を持って理解しようとすれば、その国の人たちをもっと身近に感じると思います。

 

 マレーシアとシンガポールに住んで約7年です。 興味深いのは、オフィスワーカークラスは当たり前に数ヶ国語に堪能です。 マレーシアの中華系の人たちは、マレー語、北京語、英語を生活用語として、かつ家族がもともと使っている出身地の中国語(広東語、福建語その他)も含め、4ヶ国語を操ります。 シンガポールの中華系の人たちは、北京語、英語及び自分たちの家族がもともと使っている出身地の中国語と、普通3ヶ国語を使い分けます。

 

 『語学で得るものは?』と、たいそうなお題をつけましたが、言葉ができるのは当然として、仕事の現場で現地人に存在感を示し、決断し、仕事を率先していくのに必要なものは、自分自身の知識や考え方です。 深い知識を持ち、シッカリした考え方を持ち、それを言葉で表現して初めて言葉の価値が出て、あなたに厚みが出ると思います。
 専攻の言葉の知識を高め、人と交流して情報を交換し、あなたの考えを人に伝える。 コミュニケートできることによって、海外の異なる文化や価値観を持つ人たちとより深い交流が可能になる。 これが外国語を学ぶ価値であり、素晴らしいことだと思います。

最後に

 図らずもこんな堅苦しい内容になってしまい、私の性格を知る人たちは、きっとゴーストライターが居るに違いないと疑っているはずです。 (居ませんよー、念のため)
 最後に最も大事なことは、何語を使い、どの世界に居ても、生活をエンジョイし(個人的にはゴルフもエンジョイ)、いつも何かに前向きにチャレンジすることだと思います。 家族、友人、仲間や隣人たちとも楽しく過ごし、交流し、影響し合う。 言葉はその楽しみを高めるツール。 今まで書いた長い前置きの結論は、きっとこれだと思います。 では皆さん、ALL THE BEST!

 
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