綾田 早笑 さん

略歴

京都NGO日本国際民間協力会
(2009年11月現在)


 ピピッ、ピピッ。アラームが鳴り響く。
 ドイツ国際平和村の朝は早い。
 朝6時45分。まだ外は真っ暗な中、今日も1日どんなことが待っているのかわくわくしながら子どものBereich(宿舎)へ。

 すると、早朝にも関わらず、早起きした子どもたちの元気な声が聞こえてくる。
 扉を開け部屋に入ると、子どもたちが一斉にかけよってき、嬉しそうな笑顔で私の名前を呼びながら抱きついてくる。
 一人一人ぎゅっと抱きしめ、”おはよう”と声をかけていくが、その後がもう大変。
 パジャマのまま走り回り、せっかく準備した今日の服は他の子どもの服とぐっちゃぐちゃ。
 一人で服を着られない2歳以下の子どもたちは、自分が一番にベッドから連れ出してもらえないと泣き叫び、一時Bereichはカオス状態。
 パンパースを換え、着替えを済ませ、食堂に行き朝食を食べ、遊びの時間・・・と保育所と同じように一日が始まる。
 いっけんここは保育所の様でもあるが、小児病院の様でもあるのが、ここドイツ国際平和村。

 現在、ドイツ国際平和村には、アフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、アルメニア、グルジア、カンボジア、アンゴラ、セネガルの子どもたちが生活している。

 私はそこで、その様々な国出身の子どもたちの世話をしていた。
 私が働いていたBereichには、6ヶ月の赤ちゃんから4歳の子どもが生活する。
 子どもたちは、膀胱が外に飛び出ていたり、腸が飛び出していたり、肛門がないため人工肛門を創りボイテル(袋)をつけていたり、口唇口蓋裂であったり、生まれつき奇形で手足の指が3本しかなかったり、骨髄炎であったり、やけどで頭半分髪が生えず、顔はケロイドで、手の指は丸くくっついてしまっていたり耳がくっついてしまっていたりする。
 どの子どもの家庭も貧しく、貧しいが故に引き起こった事故での怪我や、戦争による二次被害など、母国では治療ができない病気や怪我を背負ったを子どもたち。
 そんな子どもたちを、ドイツ国際平和村は、子どもたちの母国からドイツに子どもを連れてき、ヨーロッパの進んだ医療を無償で提供し、また母国に子どもたちを帰すという支援を行っている。

 私がドイツ国際平和村を知ったのは、中学3年生のとき。
 女優・東ちづるさん著書の『わたしたちを忘れないで ドイツ平和村より』という本を読んでだ。
 この時まで、私は世界にこんなに苦しんでいる子どもたちがたくさんいるということを全く知らなかった。
 この本を読んで、自分の豊かさに気付いたと同時に、苦しんでい子どもたちを助けたい!豊かな自分が何かしなきゃいけない、と思うようになった。
 それからずっと一度はドイツ国際平和村を見てみたい!と思っていて、その夢が大学3回のときに叶った。
 私がドイツ語を始めたのも、このドイツ国際平和村に行ってみたかったがためだ。
 夢のドイツ国際平和村訪問を行ってみると、なぜか大学卒業したらここにくる!と自分の中で決まった。
 そして就活をせずに、ドイツ国際平和村の研修生の応募をし、受かった。

 ドイツ国際平和村の研修を通して感じたことは、子どもたちの生きるパワーの強さだ。
 もちろんドイツ語の壁(子どもの症状を詳しく説明することが出来ないだとか、異文化の大変さ)も大きく感じたのだが、それより何より子どものパワーが凄まじかった。
 どんな傷を負っていても、病気であっても自分の出来ること以上のことを彼らはする。
 片足がなくたって、松葉杖でだれよりも速く走る。手の指がなくたってなんとかして物を持ってご飯を食べる。
 そんな彼らの姿を見ていたら、自分の裕福さに後ろめたさを感じる。
 自分は彼らよりなんだって出来るはずなのに、これでいいのか、と。もっと自分も必死に生きなければいけない、と。

 現在私は、京都のNGO日本国際民間協力会(NICCO)でインターンをしている。
 ここでは、滋賀県竜王町にある畑で有機栽培や不耕起型冬期湛水を実践して稲を育てたり、小学校6年生に国際理解教育の授業をしている。

 私の夢は、世界中の子どもたちの笑顔を守ること。ストリートチルドレンや貧しい子どもたちを守る家を造ること。そのために今もNGOで勉強している。

 治療を終え一度は母国に帰った子どもがまたドイツに来たとき、ふっくらしていた彼女が痩せていたこと。
 余命3ヶ月の末期がんの子どもと接したこと。
 歩けなかった子どもが泣きながらも自分の足で一歩を踏み出したこと。
 様々な体験がこの先も国際協力をやりたい!もっと子どもを助けたい!!という想いに繋がっている。

 やりたいと思ったことは、全部やってみる。たった一度の人生だから。
 私は安定よりも、どろくさい、毎日必死な人生を歩みたい。毎日が満足と言える人生を送りたい。
 どれだけ大変でも、彼らと比べたらそんなの比じゃないと思うから。
 子どもたちの笑顔をもっとみたい。私の人生で達成したいことは、ただそれだけです。
 みなさんもどうか、満足いく選択、人生を。

写真提供:ドイツ国際平和村

11月4日に本学で実施された講演の様子


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