学部長メッセージ

今こそ人と人が生み出した文化を見つめ直そう

文化学部 学部長
村上 忠喜
20世紀は戦争の時代であったが、21世紀はウィルスとの闘いになるという予測は、図らずしも的中してしまいました。加えてロシアによるウクライナ侵攻は、前世紀の忌まわしい記憶を呼び起こすに十分な衝撃を世界に与えています。これからの人間社会はどうなっていくのでしょうか。見えない敵や不透明な先行き感は、ともすれば他者理解を阻む大きな壁になります。こんな時だからこそ、私たち人が歩んできた道や、生み出してきた多様な文化を、単なる過去の遺物としてではなく、これから生きていく糧となるように見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
人にとっての文化は、魚にとっての水のようなものだと言います。普段の生活ではさして気にはならないけれども、なくなると生きていけないものです。そしてそのひとつひとつー文学、思想、芸術、技術、慣習などーは、個々存在するのではなく、地域や社会と深く結びつく中で生まれ、変化して現在に至っています。私はよく学生さんに言うのですが、「今ここに生きている皆は、長い人類史上の最終成果物」なのです。
多様な文化事象を勉強する意味はそこにあると思います。ある文化事象をその時代や社会の脈絡の中で捉えつつ、現代的な意義を見出そうとする姿勢が大事なのです。文化学部における多様な学びは、皆さんに生きるヒントを与えてくれるものと信じ、またそうなってほしいと願っています。
具体的に何を学ぶのかというと、京都文化学科では、日本のスタンダード文化を数多く生み出した京都の地で、歴史、文学、芸能、美術、工芸、民俗、そして人々の交流による観光事象などから、京都という小地域における文化事象のつながりや脈絡の姿を実体験しつつ学びます。国際文化学科では、外国語科目と並行して、人文学の各分野や世界の地域文化などを学び、文化の多様性と文化のレガシーを、学生のみなさんの興味・関心に添って、文献やフィールドワークをとおして掘り下げ、体感していきます。両学科とも、3年次になると、魅力を感じたテーマを選び取り、卒業研究の完成に向けて研究を進めます。
4年間の文化学部の学びを通じて、ヒューマンリテラシーを身につけた社会人となられんことを・・・。
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