所長挨拶

タンパク質動態研究所 所長
永田 和宏 教授

生命活動の担い手としてもっとも重要な役割を担っているのは、間違いなくタンパク質であり、従って、その機能の研究は、生命科学の根幹にかかわる研究と言えよう。

ヒトのタンパク質は、遺伝子上は27,000種類ということになっているが、実際には修飾されたり、組み替えられたりして10万種類程度存在し、一個の細胞のなかには80億個ほどのタンパク質があると言われている。それらが個々の細胞のなかで、毎秒数万個のレベルで生成と消滅を繰り返しているのが、生命活動の実態である。

タンパク質はアミノ酸がひも状に繋がったものであるが、そのアミノ酸の配列を指令しているものがDNA上に書きこまれた遺伝情報である。DNA上の遺伝情報は、mRNA(メッセンジャーRNA)に転写され、その情報がアミノ酸配列に翻訳されて、ポリペプチドとして合成される。
このポリペプチドがタンパク質として本来の機能を獲得するためには、まず正しく折りたたまれ、構造を作らなければならない。さらにそれが本来機能するべき場へ輸送されなければならず、また働きを終えたタンパク質や構造に異常をきたしたタンパク質は、速やかに分解されなければならない。
生体内においては、このように常に、タンパク質の合成、成熟(構造形成)、移動(輸送)、そして分解のバランスに基づく〈恒常性〉が担保されていなくてはならない。生命機能におけるそれら〈恒常性〉の破綻は、個々のタンパク質の機能不全による種々の病態のほか、分解処理の異常による、例えばアルツハイマー病やパーキンソン病、筋側索硬化症(ALS)などをはじめとする神経変性疾患などの病態を惹起することになる。

タンパク質に関する従来の研究は、機能と構造を持った個々のタンパク質に関するものがほとんどであり、それらをタンパク質動態として捉えるものは数少ないと言わざるを得なかった。また個々のタンパク質が互いに相互作用することによって、機能単位として組織化されることは、機能発現において重要なステップであるが、そのような観点からなされる研究も必ずしも十分とは言えない状況にあった。
京都産業大学「タンパク質動態研究所」では、タンパク質の合成、成熟(構造形成)、移動(輸送)、組織化、そして分解までを視野に入れ、それらを統合的に研究することを目的として設立された。生命活動を担う最重要分子であるタンパク質の、これら〈動態研究〉を通じて、学術の進歩発展に寄与し、その成果を社会に還元するとともに、人類の抱える多くの病態解明とその克服を目指すことを目的とするものである。

本研究所を構成するメンバーは、タンパク質動態研究において、文字通り世界をリードしている研究者である。5人の教授と准教授、それに博士研究員や大学院生らが研究に参加するが、このように重要なタンパク質動態について、これだけの研究者が集まって協力できる場は全国的にもきわめて珍しいと言っても過言ではないと考えている。国公立、私学を問わず、「タンパク質動態」を冠した研究所は全国的にも他に例を見ず、このような高い専門性と強力な研究力を生かして、互いに協力しながら、インパクトのある成果を社会に、世界に発信していくことが可能であると考えている。本研究所から、世界に発信しうる成果が必ず生み出されるものと確信している。

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