むすびわざ講座「ヨーロッパの今 フランス社会の分断と結合—多様性と共生に向けて」

2015.11.14

■レジュメ
フランス社会の分断と結合—多様性と共生に向けて
(パリ・テロ事件の社会学的背景-教育における社会的排除の現実)
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~arai/musubiwaza20151114.html
 11月14日、むすびわざ館において、外国語学部 荒井 文雄 教授が講師となり、生涯学習むすびわざ講座公開コース「ヨーロッパの今 フランス社会の分断と結合—多様性と共生に向けて」を開催した。

 2015年1月にフランス・パリで発生したシャルリ・エブド(Charlie Hebdo)社への銃撃事件から端を発したパリの一連のテロ事件を題材に、実行犯であった移民系フランス人の若者たちが、フランス社会でどのような状況に置かれているかについて解説した。経済的、社会的に恵まれない移民系フランス人、特にアラブ・アフリカなどからのイスラム系移民の教育課程における「社会的排除」を中心に考察し、テロ実行犯のような存在を生みだしてゆく背景を社会学的見地からひも解いた。

 本講座前日の11月13日にもパリ市内で多数の死傷者がでるテロ事件が発生した。荒井教授は、これらの事件を発生させた社会的現実に対して、私たちが普通の市民として排除ではなく理解へ向かうことが大切であり、そのためには、メディアや学者・評論家など、「代表して語る声」に対する批判精神と姿勢、自己責任ですませないという姿勢、表層を超えた理解を示すことが大切ではないかと指摘した。

 また、「表向きのことば、情報の向こう側に、本質をとらえた現実的思考・判断を培うため、教育や自己啓発へ向けて市民の皆さんとともに前に進んでいきたい」とのメッセージで結んだ。

 参加者からは「パリのテロ事件があり、タイムリーで興味深かった」「難しい問題だが、日本でも無関係な話ではなく、考えて行かねばならない」という声が寄せられた。
フランスにおけるイスラム移民系の若者たちの社会的現実について解説する荒井教授
シャルリ・エブド社へのテロ事件に抗議するフランスの人々の写真を交えて熱心に語る荒井教授に耳を傾ける受講生
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