「スポーツと人間形成」で元ラグビー日本代表の元木由記雄さんが講義

2014.05.30

 元ラグビー日本代表最高キャップ数(国際大会出場回数)保持者で、現在は本学ラグビー部ヘッドコーチの元木 由記雄さんが5月30日、共通教育科目「スポーツと人間形成」でゲストスピーカーとして講義を行った。

 元木さんは19歳で日本代表に選ばれてから38歳で引退するまで、大学選手権優勝3回、ワールドカップに4度出場するなど常に日本ラグビー界のトッププレーヤーとして活躍してきたことから、「鉄人」、「ミスターラグビー」と呼ばれるほど、数多くの偉大な功績を残している。その元木さんが昨年から本学ラグビー部のコーチに就任し、『指導者として大学ラグビーの頂点を目指す新たな挑戦』を始めている。
 講義は、日本のトッププレーヤーとして活躍してきた元木さんが、「多くの困難や壁にぶつかりそれを乗り越えようと前に突き進む中で得られた気づきや成長の経験を学生に伝えたい」との思いから、『これまでの問題が未来のチャンスになる』と題し、自身の人生のターニングポイントになった3つの経験を語った。

 1つ目の経験は、元木さんが26歳の時。大学時代から日本代表を経験し、社会人になっても神戸製鋼で日本一になるなど活躍を続け、24歳で日本代表の主将を任されていた。しかし2年間主将を務めていた時に監督が変わり、突然主将を外されたという。納得がいかなかった元木さんはその原因を周りに求め、練習に集中できずにいた。しかし、原因を外に求めても物事は良くならないことに気づき、“自分自身を見つめなおすこと”で集中力も高まり、本来の姿を取り戻した。そこから“常に自分に目を向けること”の大切さを学んだ。
 2つ目の経験は、29歳の時。心身ともに鍛え抜かれた元木さんが突然パニック障害を患った。チームが勝てず精神的に追い込まれていたが、仲間に弱いところは見せられないと無理をしていたことが原因だった。その経験から「見えないところで多くの人が自分を助けてくれていることを知り、“感謝の気持ち”と“仲間を思いやり信頼することの大切さ”を学んだ」と学生に伝えた。
 3つ目の経験は、試合に出場できない日々が続き、“引退”の二文字が頭をかすめていた35歳の時。激しいプレースタイルの代償として8年前から痛めていたアキレス腱を断裂した。通常であればその時点で「引退」となるが、元木さんは切れた瞬間にやめてはいけない気持ちになったという。その後1年間の苦しいリハビリを乗り越え36歳で見事に復帰。自分自身が納得できるまで現役生活を送った。まさに“ピンチな時ほどチャンス”だと考える元木さんらしい生き方である。
 3つの経験の他に、学生から元木さんに対し『世界で戦える選手になるには?』、『ベストパフォーマンスを発揮するには?』、『リーダーの役割とは?』など多くの質問があり、元木さんは、“どんな選手になりたいのかイメージをはっきりと描くこと”、“目の前のプレー、授業などすべてに全力を尽くすこと”、“決して諦めず、感謝の気持ちを持って真摯に向き合うこと”と学生に熱く語りかけていた。
 

 最後に、まとめとして「人生のターニングポイントはピンチの時にこそある。調子がいい時は自分を振り返ることが難しい。スランプに負けそうな時は“成長できるチャンス”と捉え、真っ向からぶつかってほしい。ただ、一生懸命努力しても、必ずしも思った通りの解決につながらないこともある。100%をかけて頑張ってみても願いが叶わないこともある。でもそれが、一生懸命努力した自分へのその時点での最善の答えだと思う。なりたい自分に向かってチャレンジし、未来を掴み取ってほしい」と力強く学生にメッセージを送った。
学生に熱く語りかける元木さん
元木さんから学生に質問する場面も
学生は元木さんの話に聞き入っていた
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