Catch Up WORLD

今知っておきたい旬なトピックをポイント解説!キャッチアップ・ワールド Catch Up WORLD

経営学部 在間 敬子 教授に教えていただきました!

今号のPickUp シェアリングエコノミー Sharing Economy
転勤などによって住まなくなった家や平日は乗らない車、英会話や料理といったスキルまで、個人が保有する遊休資産を使いたい人に有償で貸し出す「シェエアリングエコノミー」。当初は個人間(C to C)で利用され始めたのですが、信頼性や相手が見つけにくい等々の問題がありました。そこで、企業がインターネットを使ったマッチング・プラットフォームを開設し、事業化(C to B to C)することで広がっていきました。なお従来のレンタルとのちがいは所有者が利用していない状況をリアルタイムで発信、瞬時にマッチングされる点にあり、借りる品やサービスの評価情報が得られる仕組みをふくめ、IT技術の進化によって成立した経済活動であることを覚えておきましょう。

シェエアリングエコノミーの主なタイプ

★フリーマーケットも広義には“モノのシェア”であり、個人の資金をシェアする
と考えれば「クラウドファンディング」もシェアリングエコノミーにふくまれる。

Q
「シェアリングエコノミー」が急速に普及・拡大したのはなぜですか?

学生の皆さんのようなデジタルネイティブ世代が
市場の担い手になってきたことが要因のひとつです

「シェアリングエコノミー」の世界市場は2013年頃、150億ドル(約1兆7千億円)でしたが、2025年には約22倍の3,350億ドル(約38兆円)に達すると言われています。もちろん日本も同様であり、2016年に約500億円だった市場規模は2020年、2倍強の約1,130億円になると予想されています。これほど急拡大した背景には、いつでも・どこでも・誰もが情報にアクセスできるスマートフォンの普及に伴うソーシャルメディアの発達があります。それは先述した個人間(C to C)取引の弱点、顔の見えない(知らない)人がシェアしようとする空間・モノ・スキルなどへの不信感を情報入手によって払拭、信頼性が“見える化”できるようになったことを示唆しています。また、その牽引役はデジタルネイティブ世代と呼ばれる若者に他なりません。学生の皆さんにも「シェアリングエコノミー」になんら抵抗感を覚えず、手軽で便利な仕組みと捉えている人は多いと思います。

Q
今後の社会に「シェアリングエコノミー」はどんな影響を与えますか?

ものづくり産業のイノベーションに加え
新たな人と人の“つながり”が創出される社会が
到来する可能性を感じています

「買って気に入らなければ貸し出せば良い」。このように考える人が増えれば、これまで“売れ筋”でなかったレアな品々、あるいは環境に配慮した製品を買ってみる人が増えるかもしれません。するとメーカーも大胆な商品開発ができるようになり、イノベーションが進むことが予想できます。また、シニア世代が仕事を通じ、蓄積してきた知識や技能をシェアすることで次世代に繋ぐことも期待でき、産業基盤が再強化される可能性も感じます。但し「シェア」には本来“わかちあう”という概念があり、それは人が古来から行ってきた人としての営み。経済活動と異なる側面も生じるように思います。実際、マッチングはスマートフォンなどのデジタルメディアを媒介にして行われますが、空間・モノ・スキルなどをシェアする際、貸す人と借りる人が直接“会う”ケースは少なくないでしょう。その結果、もたらされるのは未知の人と人が出会い、「新たな人と人の“つながり”が創出される社会」の到来なのかもしれません。

Q
学生が「シェアリングエコノミー」を利用する際の注意点はありますか?

シェアを受ける側もシェアする側も
プラットフォーマーは慎重に選びましょう

ソーシャルメディアの発達により、シェアを受ける空間・モノ・スキルなどの信頼性が“見える化”できるようになりましたが、決して万全なわけではありません。プラットフォーマーと呼ばれるマッチング事業者がどのような責任を負っているのか、トラブルに対応してくれるのか、返品や解約は個人間で交渉するのか、これらを利用に先立って確認すべきです。また、大手保険会社がシェア事業に関する保険を開発したようであり、そうした保険への加入をふくめ、自身がシェアする側になる場合もプラットフォーマーは慎重に選びましょう。さらに皆さん自身がプラットフォーマーになる(起業する)ことも考えられますが、後発事業者が成功するのは難しいようです。但しリスクだけを注視していてはイノベーションは生まれません。まずは私が研究する「経営課題解決と環境経営の両立」を可能とするアイデアなどなど、新たな「シェアリングエコノミー」について皆さんと議論してみたいと思っています。

vol.83 サギタリウス 2019年3月22日発行

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