むすびプロフェッサー

成熟した市場でも、企業が成長する術はある。先端研究の学びでむすぶ人を育むむすびプロフェッサー

経営学部 中野 幹久教授
大阪大学基礎工学部卒業後、1990年より株式会社三菱総合研究所に入社。その後、神戸大学大学院経営学研究科で興味のあったロジスティクスについて学び、修士課程、博士課程を修了。2005年に京都産業大学に赴任し、2013年より現職。

プロダクトではなく、プロセスで
イノベーションをうみだす方法。

イノベーションと聞くとスマートフォンのようなモノ、企業視点でいうとプロダクトのイメージが強いかもしれませんが、近年先進国ではプロセス面でのイノベーションに繋がる、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」が注目を集めています。

01 研究内容継続的にイノベーションを生み続ける
方法論としては、サプライチェーンマネジメント(SCM)が昨今のトレンド。

みなさんは「サプライチェーン」という言葉を知っていますか?簡単に説明すると企業が製品やサービスを消費者に提供するまでのプロセスの総称のことで、原材料の「調達」、製品の「生産」や「販売」、そしてこれらをつなぐ「物流」の大きく4つの機能を持っています。製造業界を例にすると、企業は製品を販売するにあたり、どのくらい売れるかを予測して生産量を決め、その生産量の計画に基づいて原材料の調達量を決めています。しかし、もともとの予測が不精確だと欠品や在庫過剰につながってしまうため、企業にとっては損失になってしまいます。

サプライチェーンマネジメントとは、こうした予測の精度を高め、企業の売上向上や成長促進、さらには企業活動を通じた顧客へのメリットの提供にもつながる最適なプロセスを見出すための理論です。製品で差別化が難しい業界で特に注目されている分野なのですが、まだまだ研究が進んでいないことや、部門間、企業間での連携と合意形成が欠かせないことから、企業にとっては一筋縄では実現の難しい取り組みといえます。

02 研究内容SCMを実践し、イノベーションをうみだすには?
さまざまな観点から導き出した方法論を
ポイント解説。

では企業内でSCMを実践するにはどうすればいいのでしょうか。SCMは全社的な取り組みのため、まず経営陣の強いリーダーシップが欠かせません。その上で、①予測精度の向上②効率と顧客メリットの両立③企業構造の最適化④人材育成の大きく4つに取り組んでいくべき、というのが現時点での私の考えです。

例えば、①については部門間が密に連携して知恵を出し合い、予測の方法論を取り決めた上で改善をし続けることが重要ですし、②では生産計画を立てる前に製品の個数だけではなく、製造の原価と製品の売価を考慮した金額で管理し、ムダを削りながら製品の素早い提供が可能な戦略を見つけることが必要だと、これまでの研究で明らかになっています。現在は③を研究しており、SCMの実務を担う専門の部門を製造現場に近い配置にするか、経営層側にするかがポイントだとわかってきています。最適な企業構造は事業の内容によって異なるので、企業の実情を踏まえた判断が成否を分けるといえます。今後は④の人材育成についても研究を進めたいと考えていますが、研究すべきことは山積みなので、私の興味の追求はまだまだ続いていくでしょう。

03 ゼミ内容ゼミ生自ら活動を提案してもらい、
オリジナルの経験を積んでもらっています。

学生にも自分の興味を追求してもらいたいと思いますので、ゼミでは、学生に「何をやってみたい?」と問いかけるところから始め、自分の課題という意識を持って主体的に活動してもらっています。

今の3年次のゼミ生たちは、「SCMに関連しており、ハチミツを活用する取り組み」というお題に対し、「商品開発をしたい」と答えてくれました。そこでいろいろな人に話を聞き、個人営業のパン屋さんに交渉。その後はこれまでの学びを活かしてどのようなパンを売るべきかを考え、商品開発を行いました。共同開発したパンは、無事に昨年11月から2ヶ月間販売することができました。この経験は、きっと大きな財産になるはず。今後も自分たちで考え、行動を起こし、社会の発展に貢献できる人になってほしいと思います。

ゼミ生自ら活動を提案してもらい、オリジナルの経験を積んでもらっています。
今の日本に必要なのは、SCMの専門家。企業の継続的な成長に貢献する人材です!中野先生のハマりもの!趣味は野球観戦で大の阪神ファン。ですが、長い野球ファン歴の中で一番の思い出は、2004年に観戦したドジャース※の野茂投手(当時)が登板した試合です。それまで10連敗していたチームの勝利に球場はスタンディングオベーション。あの感動は生涯忘れられないと思います。※メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャース

vol.78 サギタリウス 2018年1月25日発行

サギタリウスに載りたい人募集!京都産業大学 広報部までお問い合わせください。E-mail:ksu-sag@star.kyoto-su.ac.jp TEL:075-705-1411

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