むすびプロフェッサー

先端研究の学びでむすぶ人を育む むすびプロフェッサー 生命活動が生まれる仕組みを解き明かしたい。

総合生命科学部生命システム学科 千葉 志信准教授
北海道大学、同大学大学院薬学研究科修士課程を修了後、京都大学ウイルス研究所で学位を取得。カリフォルニア大学サンディエゴ校での博士研究員や京都大学ウイルス研究所助教を経て、2010年4月に助教として本学総合生命科学部に着任。2014年4月より同准教授に就任。

仕組みを解明する手がかりは、
さまざまな機能を担うタンパク質。

私たちの体はDNAの遺伝情報をもとに作られています。では、この情報はどのようにして生命活動に変えられるのでしょうか。そのカギを握っているのが、さまざまな生命活動を担うタンパク質です。

01 研究内容タンパク質が生命活動を担うには、
合成されるだけでなくそれぞれの“仕事場“へ
運ばれる必要があります。

私たちの体の中には何万種類というタンパク質が存在し、呼吸や体内における物質の合成をはじめ、さまざまな働きをしています。タンパク質は生物にとって不可欠ですが、生命活動を維持するにはタンパク質がそれぞれの“仕事場”へと正しく運ばれる必要があります。私は、タンパク質の合成、そして“仕事場”へと輸送されて機能を発揮するまでのプロセスが、生命活動を生み出す最初の重要なステップと考え、研究を行っています。

今回は、私が行っている研究の一つである、「膜タンパク質が膜に挿入される仕組み」についてご紹介しましょう。膜タンパク質とは、一つひとつの細胞の膜に埋まっているタンパク質の総称です。細胞内外での物質や情報のやりとり、エネルギー産生など、とても重要な働きをします。これらは、合成後、「タンパク質膜組込装置」が作る筒状の通り道を通って膜に埋め込まれると考えられてきました。ところが私たちは、それに加え、筒状ではないタンパク質膜組込装置もあることを発見しました。これまでの常識では理解できない新たな仕組みが見つかったのです。

02 研究内容生命活動に不可欠な
新しいタンパク質膜組込の仕組みを発見。
新たな発見は未来の健康につながるはず。

今回発見されたのは、「YidC」という“コの字型”のタンパク質膜組込装置。その役割もタンパク質膜組込のメカニズムも、全貌はまだ明らかになっていません。つまり、YidCは、これまでの常識では説明できない構造でありながら、生命活動に欠かせない役割を担う、とても興味深いタンパク質なのです。

この重要な膜タンパク質が実際にどのようにタンパク質を膜内に組み込むのかについては、遺伝学的な方法などを駆使して現在解析中ですが、これまで知られていた筒状の膜タンパク質とは全く異なる輸送方法であることは確かでしょう。今後は、Yi dCの機能解析を進め、どのような膜タンパク質がどのように輸送されるのかを解明することが直近の研究目標になります。

YidC研究を含めた「タンパク質の作られ方」の研究を通じて新たな知見を得ることができれば、将来的にはこれまで理解できなかった病気のメカニズムの解明や新薬の開発などにつながる可能性も考えられます。今回の研究はこれまでの科学になかった未知の世界への扉を開いたと考えることもでき、科学の進歩や人類の健康に貢献できる成果につながるのではないかと期待しています。

03 ゼミ内容皆さんには研究活動を通じ、全く新しい何かを
発見する喜びを実感してほしいと考えています。

皆さんには研究活動を通じ、全く新しい何かを発見する喜びを実感してほしいと考えています。

私の研究室では、いわゆる基礎研究を行っており、これまで知られていなかったことを解明することを目指しています。“知らない世界を知る”という科学の本質的な魅力を体験できる研究室だといえるでしょう。

学生さんには配属された時点でいくつかの研究テーマを提示し、その中から興味あるものを選んでもらい、実際に研究活動に取り組んでもらいます。未知の解明を目指す研究は、一つひとつが世界の先端研究です。新たな発見をすることができれば、科学の世界にあなたの名前を残せるかもしれません。人類の健康に貢献できるかもしれません。壁にぶつかることもあるでしょうが、学生であっても“ゼロからイチ”をうみだせるチャンスがある。その可能性を信じながら、試行錯誤し成長してほしいと考えています。

知らないことを知りたい。その気持ちが、研究活動の原動力です!千葉先生のハマりもの!子どもの頃から生き物が大好き。昔はよく捕まえてきて飼っていましたが、今は写真撮影が趣味です。上の写真はアメリカ留学中に撮ったもの。瞬間を切り取ることで生命のダイナミックさが際立ち、新たな美しさが見えてくると思いませんか?

vol.76 サギタリウス 2017年7月7日発行

サギタリウスに載りたい人募集!京都産業大学 広報部までお問い合わせください。E-mail:ksu-sag@star.kyoto-su.ac.jp TEL:075-705-1411

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