2020.07.20

特集

5Gの導入で通信技術は新たなステージへ!! 未来はどう変わる? 

写真:shutterstock

未来やロボットについて想像すると、ワクワクしますよね。
5G(第5世代移動通信システム、「ゴジー」あるいは「ファイブジー」と読む)の導入により、世界は急速に発展していくと聞きました。5Gには超高速(無線通信の速度がとても速い機能)・超低遅延(高画質を維持したまま、従来よりもライブ配信の視聴遅延を抑えることができる機能)・多数同時接続(基地局1台から同時に接続できる端末を従来に比べて飛躍的に増やせる機能)などの技術が期待されています。
私たち学生は、PCやスマホといったデジタル製品とは切り離せない環境にいるので、今後もそれらデジタル製品の重要性は増す一方でしょう。
情報化社会の今、5Gというワードを切り口に近未来の社会の動きについて、情報理工学部の蚊野浩教授に話を伺いました。
※この記事は6月下旬にオンラインで取材したものです。

情報理工学部の蚊野浩教授。終始笑顔で説明してくれた。

黎明期の1〜2G、戦国時代の3〜4Gを経て

— 5Gにいたるまでの歴史を、簡単にお聞かせいただけないでしょうか?

古閑さんは何年生まれ?

— 1999年生まれです。

じゃあ、2010年ぐらいにはすでに小学生で、iPhoneもスマホもすでにあった世代だね。私が子どもの時には携帯電話は存在しなかったから、大きな違いです。私の専門は通信の隣接分野の画像処理ですが、だいたいの流れをお話ししますね。

1979年のアナログ自動車電話サービスから1Gが始まったと言えます。移動通信システムの黎明期でした。まだこの頃は自動車に備えつけでしたが、1985年に携帯して持ち運べるようになります。画期的でした。
バブル期終了後の1993年からデジタルの2Gになり、メールをはじめとする携帯データ通信の利用が本格化しました。しかし、このころはまだ1G、2Gという呼び名もありませんでした。

—バブル期といえば芸人の平野ノラさんが持っている、あのショルダーフォンのイメージですね。

はい。通信システムの流れを図にしてみました。国内の携帯電話サービスは1987年に始まりました。約30年後の2018年で1.73億件の契約数に達しています。

2Gから3.9Gまでは「PDC」「GSM」「LTE」「WiMAX」といった規格が乱立していた、技術の戦国時代でした。3Gは2Gと比較して高速なデータ通信が可能となった結果、高音質な通話や動画の配信、テレビ電話機能など、さまざまな通信サービスが実現しました。

—「LTE」「WiMAX」はテレビのCMでよく聞きました。規格を示す意味だったのですね。

そうですね。3.9Gまではいろいろあった規格を統一したのが4G。4Gで規格が完成したと言えます。完成したその先に登場したのが、今回の5Gです。政府も、5GのPRにとても気合が入っていますね。

同じ携帯電話を10年以上使っている人をほとんど見かけないのは、電池の寿命だけでなく、通信規格の影響も大きい。

テレビ中継、スポーツ、音楽ライブ。広がる新たな可能性

—5Gの普及によって、映像や情報の処理技術は向上しますか?

通信するときの画質は格段によくなりますよ。どれくらい良くなるのかというと、たとえば、今スマホを使ってテレビ会議もできますが、それほど画質は良くならない。PCのほうが画質がいいですよね。
なぜスマホの画質が悪いのか? LANケーブルのような有線でつながっていないからです。LANケーブルでつながっているPCのインターネット回線なら画質がいいですよね。
ただ、5Gの導入によって有線でつなぐ必要がなくなるんです。
どういうことかというと、たとえばラグビーや陸上、サッカーといった屋外スポーツをインターネットの動画配信サービスなどで中継するときに、画質の悪いモバイル回線で中継するわけにはいかないですよね。屋外だと無線LANの基地局がないと、高画質にするのは難しいですから。
しかし、5Gのネットワークインフラ(基地局の整備)が全国的にもっと普及すれば、インターネット回線で中継するのと同じくらいか、場合によってはそれ以上の画質がモバイル回線でも再現できるようになります。

—なるほど。5Gの普及によって、スマホの可能性も広がるわけですね!

写真:shutterstock

—5G回線を利用することで、音楽ライブなどをVRで遠隔視聴することは可能ですか?

はい。ライブを含むエンターテインメントの映像をVR(ヴァーチャルリアリティ、仮想現実)で観るというのは5Gの大きなアピールポイントのひとつとなっています。VRのような臨場感のある3D映像やマルチアングル視聴は容量が大きいため、現状の4Gでは通信に時間がかかります。しかし、5Gは通信速度が4Gの10〜20倍速いので、大容量データ通信が可能になるのです。
VRで遠隔視聴するというのは一般の人には少し伝わりづらいかもしれませんね。具体的にどんな状況なのか、説明しましょう。
たとえば、アイドルグループのライブ会場のいろいろな場所にカメラを設置するとします。ステージ正面から全体を撮るカメラ、アイドルの一人一人を追うカメラ、後ろ姿をねらうカメラ、演奏者の楽器を映し続けるカメラ。何台も設置したそのカメラの映像を、視聴者が自分で選択して観ることができるようになる。ある人は、自分の好きなアイドルが観られるカメラだけを追いかけ続ける。ある人はギタリストの演奏だけを観ている。ある人は俯瞰でステージ全体を鑑賞し続ける。
そのように、観たいものに合わせて自分の視点を選べる、そんなイメージですね。

—そんなことができるんですね!

それがいわゆるマルチアングル視聴です。音楽のライブ会場だけでなく、たとえばサッカーのワールドカップのような試合でも同様に、俯瞰のカメラや個々のプレイヤーを追うカメラ、ゴールキーパーのカメラ。さまざまな楽しさがあります。

イラスト:総務省総合通信基盤局電波部移動通信課  新世代移動通信システム推進室 https://5g-contest.jpより 

— VRというと、ゴーグルのようなカメラをつけて、3Dで映像を立体で感じられるものというイメージがあります。

VRで観るというのは単に「あたかも自分がそこにいるかのように楽しめる」という言葉の表現に過ぎないんですよ。VRにはいろいろなケースがあります。先程のライブ会場の例もそうだし、ヘッドマウントディスプレイを装着して3Dを体験する方法もあります。

— こういった、VRで未来に何ができるのかをお聞きすると、想像が広がってワクワクしてきます。

エンターテインメント方面での5Gの活用に関しては発想次第というか、技術的には思いついたらできることが多いです。昔から映像については「こういう技術はあります。ただ、実際に再現したら案外映像がしょぼい。画質が粗い」のが問題点でした。

— そうですね。VRを使ったゲーム施設にいったことがあります。断崖絶壁の上を自転車で走る体験ができるゲームで「どれだけ脳がVRにだまされるか」を期待したのですが、画質が悪かったのもあって、あまりのめり込めませんでした。

オンライン授業でも、先生が映像越しに板書をしたら見えないと思います。それに対して、5Gになると画質は劇的に改善されるようになります。

— なるほど。

日本と世界の技術の差と、中国が覇権を握った話のあれこれ

— 在学生に向けて、5Gに関するメッセージはありますか?

今、これだけ5Gが取り上げられるのは「中国が5Gの技術を主導しているから」が大きいですね。
これまで中国は多くの携帯の端末を作っているだけで、携帯の通信システムの規格という意味ではそれほど大きな影響力を持っていませんでした。
大手通信機器メーカーのHUAWEI(ファーウェイ・華為)が、国家安全保障上のリスクになるという理由で、アメリカから敵対視されたニュースを聞いたことがあるでしょう。5Gは、規格も端末も中国が主導しています。言うなれば、5Gの技術の覇権を中国が握ったのです。
技術的な話だけではなく、そういった世界の動きは知っておくほうがよいと思いますね。

— なるほど。

今、日本のメーカーは、国内で携帯の製造をほとんどしていません。技術の多くを海外にたよって、アンドロイドのデバイスなども中国の製品を使うことが多くなっています。なので、日本が作るのは国内の末端のサービス部分だけであって、ハード部分は中国から輸入することになります。
5Gは革新的な技術ですが、国際社会の力関係でも注目されています。5Gを利用する消費者としては関係のない話に感じるかもしれませんが、みなさんは今後社会に出ていくことになります。そのとき、技術だけでなく、そこから見える世界のパワーバランスを知っておいたほうがいいでしょう。

— そういった背景もあるんですね。素晴らしいお話をありがとうございました!!


5Gをきっかけに、エンターテインメントが盛り上がるのは、とても楽しみです。この記事を書いている最中に、フルバーチャル空間でのファッションショーとライブが開催されて、配信されるというニュースを耳にしました。着実に新たな未来が到来しつつあります。
情報化社会は、5Gという次のステップに進みつつあります。大量の情報伝達が当たり前となった将来が楽しみです。

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