株式会社 京都放送(KBS京都)代表取締役社長 千代 正實さん × 山田 幸代さん対談

※所属・肩書は取材時のものです。(2013年10月)

千代さんは、京都産業大学の二期生でいらっしゃいますよね。 その当時のお話を少しお聞きしたいのですが、その頃の京都産業大学の印象はどのような感じでしたか。

私が入学した当時は開学間もなく、学生数も少なく、学生にとっては荒木学長や先生方が身近な存在でした。それに、産学協同に対する考え方が他大学と違い、 「将来自分たちは大学を卒業して社会に出て行くからこそ、しっかりした気持ちの有り様を持たなければならない」ということを学んだように思います。そうい う『建学の精神』を荒木学長が語っておられたことを今でもよく覚えています。荒木学長はオープンな方で、学長室の扉はいつも開いていました(笑)

やはり、身近に学祖がおられたというのは一番印象強いですね。荒木学長の話は「前に前に」進むという内容の話だったように記憶しています。先生の宇宙観や世界観を元に「将来の日本人の目指すべき将来像」を学生に求められたのだと思います。

荒木学長と直接対話できる機会があったのですね。会話することはとても大事だと思います。それをトップの方が自らされるというのはすごく魅力的だと思います。 ところで、今はメディア関係のお仕事をされていますが、在学中にそのような道に進んでいきたいと決められたのでしょうか。また、大学で学んだことで、今でも実践されていることはありますか。

在学中に「放送をやりたい」というところまで考えていなかったのですが、小学校の時の先生が「これからは時間を売る仕事が必要とされる時代が来る」と話さ れていたのが脳裏に残っていました。それが、京都放送を受けたきっかけなのかもしれませんね。人は産まれて成長するたびに行動範囲が広くなって、必然的に 会う人も多くなっていくのですが、できるだけそういう機会を大切にし、それが自然に広がっていくといいですね。

大学では、自分の望む望まざるに関わらず、自分のいるところでベストを尽くし、それに耐えうる精神力の強さを養ったと思います。
「目標」と「計画」がありますが、学生はよくそれを混同してしまいます。目標は絶対に変えてはいけないし、下げてもいけない。計画は目標を達成するための 方法に過ぎません。今の学生は計画を立てるのが下手なように感じます。計画が十分じゃないから、すぐに頓挫してしまう。そして目標を持っても簡単に下げて しまう。計画は変えてもいいのですが、目標は変えてはいけません。そういう「志」というか目標について、日本人として進むべき道を学祖から直接わかりやす い話で聞いた人たちは、強い人間に育っていると思いますね。

「目標」を達成するには、ビジネスの世界でもそうだと思いますが、チーム(組織)で動くことが大切ですし、個々が自立している必要があると思います。そうした自立した個人が集まっているチーム(組織)は強いし、そこでコミュニケーションが増えれば目標は絶対叶うと思います。それでも駄目であれば、目標を下げずに計画を方向転換することで目標を達成することもできると思います。

そうですね。組織論になりますが、組織を構成しているのは個人ですから、だれか一人が目標を下げてしまうとそのチームの目標は大成しません。今の若い人は 仕事を地道にやっていくのが苦手なのでしょうね。目標をすぐ達成しないと気がすまない、我慢することができないように思います。本来、目標とはすぐに達成 できるものではないですよね。そこの我慢が足りないように思います。

山田さんが言うとおり、方法はたくさん出てきますから、目標は変えず計画を変更すればいい。その過程で我慢があったり、葛藤があったりするから人間は成長 していくのだと思います。組織の中で責任や役割が自然に埋まっていき、チームの目標が達成できます。目標と計画を混同し、十分な計画を立てずに目標を達成 しようとするから途中で失敗し、粘りがないから挫折するのだろうなと思っています。

私はどうしても自分がスポーツをやっているので、それに置き換えて考えてしまうのですが、そうするとこれはこういうことなのか、とか色々考えられて楽しいですね。今もお話を聞いていてとても楽しいです。こういう感覚を今の学生にも知ってほしいです。

最後に学生に一言いただけますでしょうか。

人間というのは、一つの仕事を成した時、「これは自分がやったのだ」と言いがちです。その反面、仕事がうまくいかなかった場合は落ち込む。人間の考え方、生活には起伏があるんです。それをできるだけ少なくするということかなと思います。

『六然』に「得意淡然」、「失意泰然」という言葉があります。得意なときほど、静かで安らかな気持ちでいること、失意のときにも、冷静沈着に構えるということです。

時には慢心することもあるでしょう。しかし、そういう場面で慢心しないような人に育ってほしいと思います。逆に何かに失敗しても極端に落ち込む必要もない と思います。学生はこれからいろんな経験をしていくでしょう。学生の時代から、そのようなことを少しでも念頭においておけば、社会に出た時にあんまり落ち 込むこともなければ、慢心して吹聴するような態度にもならないでしょう。それが自分をコントロールし、志を全うする上で、一番大事なことだと思います。

学生には一喜一憂せずに、粘り強く、学生生活を送ってもらいたいと思います。

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