平成28年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」 キャリア形成支援 教育科目

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

インターンシップ3

調査名

インターンシップ3 最終授業アンケート

目的

科目に対する受講生の授業理解・満足度を調査するとともにどういった点に満足度を感じているのか明らかにする。また、インターンシッププログラム全体を通しての満足度についても調査している。

調査結果概要

アンケート回答者は、受講生226名の内、224名(回答率99.1%)。
「グループディスカッションで自分の考えを発表して得るものがあった」という問いに対して、87.5%(前年比+3.0%)が「得るものがあった」と回答。大学生活において、グループディスカッションをする機会はあまり多くないため、「自分が思ったことを発表する機会は、学生生活の中でも数える程しかなかったので、自分の役に立った」等、発表するという経験が自身の成長に繋がっているという学生が多くみられた。
「プログラム全体の内容に対する満足度」については、回答者の99.5%が「満足」あるいは「非常に満足」と回答した(設問は5件法の選択型)。満足の理由としては、事前学習におけるマナー講義での気付きや、事前・事後学習のグループディスカッションにおける学び等が挙げられていた。

講評

本調査から、本科目が受講生から高い満足度を得ていることが分かった。これは、インターンシップという非日常を経験することだけでなく、事前・事後学習を通じて、実社会での学びを深化できていることが要因として考えられる。
一方で、200名を超える学生が受講していることから、事前・事後学習は10クラスに分けて授業運営を行っている。統括教員が作成する簡易な授業マニュアルは存在するが、担当教員の属人性が非常に高く、クラスによってばらつきがある点が、毎年本調査のコメントに挙がっている。今後も、クラス数が減少することは想定し難く、継続課題であると考えている。

O/OCF-PBL2・3

調査名

O/OCF-PBL2・3最終授業アンケート

目的

科目に対する受講生の満足度を調査するとともに、どういった点に満足度を感じているのか明らかにする。また、本科目が目的とする「学んだことを本科目以外の活動に応用する」ことができているのかについても調査している。

調査結果概要

アンケート回答者は、受講生116名の内、114名(回答率98.3%)。
「プログラム全体の内容に対する満足度」については、回答者の93.0%が「満足」あるいは「非常に満足」と回答した(設問は5件法の選択型)。満足の理由としては、「企業と連携して課題に取り組むという貴重な経験得ることが出来た」、また「チームで活動するという経験」ができたことが理由として多く挙げられた。
アンケートでは、本科目の受講をきっかけに「科目以外で積極的に取り組んだもの」についても問うている(設問は「ある」、「ない」、「どちらでもない」の選択)。この問いに対して、31.6%の受講生が「ある」と回答した。「ない」と回答した受講生は35.8%であった。「ある」と回答した受講生については、部活動等において「意見が対立する場面で話し合い、一つの答えを出すことが出来た。」といった具体的な回答が得られた。

講評

本調査から、本科目が受講生から高い満足度を得ていることが分かった。これは、企業など外部機関と連携したりチームで活動したりする本科目の特性が、受講生にとって大きな刺激となっていることに起因すると考えられる。一方で、本科目の大きな目的の一つである「授業内で学んだスキルの他分野への応用」という点については、(学生の自己評価ではあるが)実践できている学生は3割程度にとどまる。この点に対する受講生の意識づけをどのように行っていくかが、今後の課題の一つであると考えている。

大学生活と進路選択

調査名

主体性/批判的思考態度/異文化受容力についての事前・事後テスト

目的

複数科目で同一のテスト(各科目実施時に事前・事後で同一の質問紙調査を行い、差分を見るテスト)を行い、それぞれの科目の教育効果の特徴を検討する。

調査結果概要

本科目の春学期の事前・事後テストでは、以下の結果を得た。
主体性については、大きく変化のあった項目が23項目中3項目あった。「初めはうまくいかない仕事でもできるまでやり続ける」が0.78と大きく上昇し、「重要な目標を決めても、めったに成功しない(反転)」が0.85減少し、「人の集まりの中では、うまく振る舞えない(反転)」が0.79減少した。つまり、できるまでやり続ける意欲が大きく向上した一方で、重要な目標でも成功する事が困難であり、集団の中でうまく振る舞う事ができないと感じられている。批判的思考態度については、特に変化が見られず、異文化受容について、12項目中2項目で大きな変化が見られた。「積極的にこちらから相手のことを知ろうとする」が0.78上昇し、「新メンバーの参加を喜び、積極的に受け入れる」が0.73減少した。つまり、相手のことを知ろうとする意欲が向上した一方で、新メンバーを積極的に受け入れる事が困難であるという自覚が高まっている。
本科目の秋学期の事前・事後テストでは、以下の結果を得た。
主体性については、大きく変化のあった項目が23項目中2項目あった。春学期と同様に「人の集まりの中では、うまく振る舞えない(反転)」が0.55上昇した。新しい項目として、「人に頼らない方だ」が0.49減少した。つまり、人に頼ってしまうという自覚が高まっている。批判的思考態度では、大きく変化のあった項目は33項目中3項目であった。「誰もが納得できるような説明をすることができる」が0.65減少し、「一つ二つの立場だけではなく、できるだけ多くの立場から考えようとする」が0.41上昇し、「自分とは違う考えの人に興味を持つ」が0.40上昇した。つまり、誰もが納得できる様な説明は困難だという感覚が高まり、多くの立場から考え、違う考えの人に興味を持つという感覚が高まっている。異文化受容力については、12項目中1項目であり、「新メンバーの参加を喜び、積極的に受け入れる」が0.90減少した。秋学期と同じく新メンバーを受け入れる事が困難であるという自覚が高まっている。

講評

全体として、春・秋共に概ね同様の教育効果が現れていると言える。数週間の固定グループワークを経て、大人数の前で学習成果をプレゼンテーションする機会があるからか、「やり続ける」という意欲は向上しながらも「実際に成し遂げる事には困難がある」という自覚が高まっているように解釈でき、これらは科目の設計上期待されている教育効果であると言える。
一方で、異文化受容については、「積極的に相手の事を知ろうとする」という意欲が高まりながらも、「新メンバーの参加を喜び、積極的に受け入れる事は難しい」という感覚が同時に(大きく)高まっており、これを現実に即した感覚ではあるとみるか、やや悲観的過ぎるのではないかと見るかは微妙なところである。今後のグループワーク終了時の総括等において、トピックテーマにする等の対応をすべきか検討が必要である。

キャリア・Re-デザイン

調査名

主体性/批判的思考態度/異文化受容力についての事前・事後テスト

目的

複数科目で同一のテスト(各科目実施時に事前・事後で同一の質問紙調査を行い、差分を見るテスト)を行い、それぞれの科目の教育効果の特徴を検討する。

調査結果概要

本科目の春学期の事前・事後テストでは、以下の結果を得た。
主体性に関する尺度(23項目)の内、2項目が大きく変動しており、その他の項目はそれほどの差が確認されない。「人の集まりの中では、うまく振る舞えない(反転)」が、0.43と大きく改善しており、集団の中でうまく振る舞えるような感覚を受講生が持つようになっていると分かる。「すぐにあきらめてしまう(反転)」が、0.40と大きく改善しており、自身の抱える課題について粘り強く対応しようという意欲が向上していると分かる。なお、批判的思考、異文化受容に関しては、どの項目でもほとんど差が確認されない。
本科目の秋学期の事前・事後テストでは、以下の結果を得た。
主体性に関して、どの項目でもほとんど差が確認されない。
一方で、批判的思考態度で33項目中2項目、異文化受容力で12項目2項目に大きな差が見られる。どちらもポジティブな反応で、批判的思考については、「注意深く物事を調べることができる」(0.56上昇)、「建設的な提案をすることができる」(0.43上昇)、異文化受容については、「その人の色々な面を知ろうとする」(0.47上昇)「慎重にこちらから相手のことを知ろうとする」(0.52上昇)であった。

講評

春学期・秋学期で異なる傾向の教育効果が得られている事が分かる。教育の質保証という意味では歓迎された結果ではない。一方、平成28年度の本科目は春・秋学期で受講生規模が大きく異なり、クラスサイズもそれに伴い変動した(春は10名前後/クラス、秋は20名前後/クラス)。本科目はグループ内で起こる多様なインタラクション『グループダイナミクス』を教育内容の主要な部分に置く特徴的な科目である。クラス運営者の振り返りにおいても、春学期と秋学期はクラスで起こったグループダイナミクスが大きく異なっていた点について意見交換がなされていた。この前提に立てば、少し乱暴ではあるが、受講生一人一人が、自ら発信する機会が多くなりがちなクラス運営(一方で、グループ内のダイナミクスはより多くの人数よりもスケールダウンする)対グループ活動を活性化しコンテンツが伝わりやすいクラス運営(一方で、各受講生の活躍の機会は相対的に減少する)と対比して解釈することができる。つまり、前者のクラスでは主体性に関する教育効果が現れ易く、後者のクラスでは、本来この科目が重要視している「多様な他者との出会い」に直結する「相手を知る」という事に関連する批判的思考態度、異文化受容に関する部分に教育効果が現れ安い。いずれにせよ、今年度のみの結果だけでこのような解釈を断定することは危険である。春・秋で全く異なる教育効果が現れている事が確認できた事は非常に興味深く、引き続き、調査・研究を必要としている。

2. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

調査対象の科目で共通して見られる長所としては、学生が受講を通して自身の成長や変化を感じ取ることができており、科目設計の上で期待している通りの教育効果が得られている点があげられる。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

複数クラスを開講しているため、どのクラスでも同じように学びの成果が得られるよう教育の質保証を実現することが、継続的な課題であると捉えている。また、当該の授業だけに留まらず発展的に他の場面でも学びの成果を応用することができるように、受講生の意識喚起をもっと行うことも課題といえる。なお、今年度の調査だけで結論付けるには難しい結果も出ており、今後データを蓄積し、検証を重ねていきたい。

3. 次年度に向けての取り組み

効果が出ている点については今後も維持・向上に努め、その他の点については調査を継続し、検証を踏まえて教育の質を高めていきたい。なお、科目の再編を検討しており、科目の系統ごとの特性を活かしながら、学部での学びに接続していく視点を重視した再編案を作成したい。
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