所信表明

 本学は3年後の2015年に創立50周年を迎えます。

 1965年以来の本学の「建学の精神」を顧みながら、その創立50周年をどのような日として迎えたいか、われわれは常日頃から考え続けてまいりました。 それは、社会、そして世界が激動する難しい時代となった現代において、本学が社会の負託に応え、近い将来、社会変革の原動力となる役割を担っている大学となっているべきだと考えるに至りました。

 本学は産学協同を実践する総合大学の完成を最終目的として、「産業大学」と名付けられました。『最高学府は社会を支える人材育成の産業(むすびわざ)であるべきだ』と考えた学祖荒木は、産学協同はアカデミズムに反するという時代背景にあって、あえて「産業」の二文字を掲げ、社会との交流を推し進めました。 「むすびわざ」とは「産業」の読み方のひとつであり、「むすぶ」は「むす」から派生した語で、「産み出す」という意味をもちます。
「新しい業をむすぶ」と読み解き、新しいもの、こと、価値を産み出すことを表しています。 京都産業大学の「産業」とは、まさにこの「むすびわざ」を表すのです。

 これが学祖荒木俊馬の「産業」に込めた思いであり、産学協同に代表される社会との連携のなかから新たな価値を生み出すことで、他に類をみない教育・研究を実践する大学を志し、多くの同志達とその具現化に営々と努めてきたのです。 そして現代、本学の草創期と同様、あらためて大学の存在意義が問われています。 ところが、わが国の大学を取り巻く社会状況は、ご承知のように世界的には激増する人口のなかでの急速な少子化経済構造の激変に伴う急速なグローバル化、情報機器の進展に伴う急速な情報化社会などの激動の渦中にあります。

学長 藤岡 一郎
 この社会の要請に大学が応えるためには科学技術の進展の一翼を担い、社会安全などの社会システムやマネジメントシステムを確立し、わが国のよき伝統と文化のもつ発展性と先見性の発信力を強化し、グローバル化とダイバーシティ(多様性)の調和を追究するなど多くの課題が山積しています。
 このことを端的に申せば、「大学は、グローバル・ガバナンスの確立のためにある」のです。 そのためには課題発見・課題解決を中核とする教育・研究の実践が必須です。 ここ数年、本学は、教員・職員・学生が一体となって協力し、PBLをはじめアクティブラーニングを展開していますが、今年度文部科学省GP補助対象に本学の5つのGPが採択されました。
 グローバル人材、グローカル人材の育成を含み、社会のニーズに応えたものです。
 グローバル時代の「むすびわざ」教育の京都産業大学モデルを全学的に構築しようとしています。
 また、研究面においても「ミツバチ産業科学研究センター」はミツバチの研究を核として多くの領域との協同展開を図る「むすびわざ」研究の一例なのです。

 このような課題発見・課題解決型の教育・研究をさらに進展させるには、グローバルな視点から、大学組織の総点検作業を加速し、内なるグローバル化を推し進め、2030年までのグランドデザインを作成し2015年にはスタートしなければなりません。 そのなかには、本学を支える同窓の方々との今以上の絆の強化、保護者の方々とのより親密な連携の進展、学生支援体制の拡大と強化、地域社会を中核とする社会への貢献の充実化、ICTの展開に伴う教育・研究の変革に対する学生への新たな贈り物になるソフト、ハード両面でのインフラ整備、また私学ならではの財務体質の改革など多くの大切な事柄を含むでしょうが、そのためには、本学の内外の多くのステークホルダーの専門知と知恵を、結集し共創して、そして芽生えた多くの新しい芽をグランドデザインに結実化しなければなりません。
 「KSUフューチャーセンター」はそれにも寄与するプラットホームであり、ワンキャンパスだからこそ可能な、わが大学の「むすびわざ」を実践する「場空間」なのです。 その際、本学の「建学の精神」を今一度見つめ直し、そのDNAを継承しなければなりません。これまで以上に、学内の潜在する諸資源の有効活用を促進し、適切な競争原理のもと選択と集中を繰り返し、施策立案と迅速な実践を的確に行う体制整備と組織改革を進めます。
 宇宙物理学者であった学祖荒木俊馬の思いを重ね、大言壮語するならば「グローバル・ガバナンス」を超えた「コスモス・ガバナンス」確立のための「むすびわざ」に「型やぶりな挑戦」をつづけます。

 この実践のために、新しいアイデンティティである「ロゴ」と「スローガン」を掲げました。
 この「ロゴ」は、「むすびわざ」をテーマに大学名の頭文字「K」をデザイン化し、「むすび」をイメージできるフォルムであるとともに、力強いライン構成によって社会にイノベーションを起こす意志の強さを表現しています。 そして、どんな時代にあっても京都産業大学は型やぶりな挑戦を続けることを念頭に「Keep Innovating.」をスローガンといたします。